2019年1月23日
自筆証書遺言に関する民法改正
昨年、民法の一部を改正する法律案が可決され、相続法の分野においては、約40年ぶりにその規定が見直されることとなりました。
その中でも、平成31年1月13日に施行された「自筆証書遺言に関する見直し」について、ご紹介いたします。
遺言の方式には一般的には①自筆証書遺言(第968条)、②公正証書遺言(第969条)、②秘密証書遺言(第970条)の3種類があります。②と③の遺言の方式は、公証人や証人が関わる必要がありますが、①自筆証書遺言については、誰の関与も必要とせず遺言者自身が作成することができますので、最も簡単で費用もかからず、遺言書の作成やその内容を他者に秘密にしておくことができます。
改正前の民法では、自筆証書によって遺言をするには、遺言者自身が、遺言の内容の全文を自書する必要がありました。したがって、相続させる財産を指定したい場合、その全て(財産目録とする場合が一般的です)をそれぞれが明確に特定できる方法で自書しなければならず、例えば、相続財産に含まれる不動産の所在地を登記事項証明書に記載されたとおりの地番や家屋番号で記載したり、預貯金であれば金融機関名・支店名・口座番号まで記載して相続財産を特定する必要がありますが、これら全てを自書するには、遺言者には相当の負担となっていました。また、記載ミスがあるために財産を特定できなかったり、書き方や修正方法の要件を満たしていないために遺言書が無効となる場合もありました。
改正民法では、全文の自書までは要求されず、財産目録については他人の代筆やパソコンで財産目録を作成することが認められました。さらに、財産目録に不動産の登記事項証明書や預貯金通帳の写し等を添付することも可能となります。ただし、この要件緩和により遺言の偽造等のリスクが高まるため、自書によらない財産目録の全てのページ(両面に記載がある場合には、両面とも)について、遺言者の署名押印が求められることになります。
この「自書によらずに作成する財産目録」を修正するには、自書および押印によらなければならないとされている点は注意が必要です。また、施行日前に作成された自筆証書遺言には改正前民法の規定が適用され、自書によらない財産目録を添付する場合の遺言書は施行日以降に有効となる点にもご注意ください。
この改正民法の施行により、自筆証書遺言の使い勝手は格段によくなり、平成31年7月1日施行の「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」と合わせると、自筆証書遺言の利用は増えていくことが予想されます。相続の紛争防止や遺言者の最後の思いを確実に実現するための遺言書の作成には、これまで以上に法律の専門家である司法書士のアドバイスが求められることになると考えられます。後々、遺言書の効力を争われないためにも、ぜひとも専門家である司法書士にご相談ください。
執筆者 司法書士 城ヶ﨑理絵