2017年12月18日

株主ごとの異なる規定の設定で決議無効とされるケース

東京地裁立川支部 平24(ワ)第2633号 株主総会決議無効確認等請求事件

平成25年9月25日、東京地裁において、非公開会社が属人的定めを置いた株主総会決議は株主平等原則の趣旨に反し、無効であるとの判決が出ております。

株主平等原則とは、会社法109条1項に、「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」と規定されているものであります。一方、属人的定めとは、同法同条2項「前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社第105条1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定めることができる。」と規定されているものであって、同法同条1項の例外規定であると今回の判旨でも明示されております。

しかし、今回の判決では、 会社法109条2項の属人的定めは、株主平等原則の例外とは言っても、その差別的取り扱いが目的の正当性を欠き、手段の相当性を欠くような場合には、株主平等原則の趣旨に違反するとして無効とされました。株主平等原則の背後には、正義・衡平の理念が存在し、全ての団体に共通する原則であるというのが、その理屈であります。

今回の事例では、非公開会社である被告が、臨時株主総会において総株主の半数以上であって総株主の議決権の四分の三以上(会社法309条4項)の議決数をもって、属人的定めを設ける定款変更を行いました。これによって、原告の議決権比率が14.7%から0.17%と大幅に減少し、剰余金の配当を受ける権利もその他の株主の100分の1まで低下させる扱いとなったため、原告側は、原告の同意に基づかない権利の制限・剥奪であって、株主平等原則の趣旨にも公序良俗にも反するとし決議無効を主張しました。一方で、被告側は、そもそも属人的定めの制度は、会社法が明文(同法109条22項)をもって株主平等原則(同法109条1項)の例外として位置付けた制度であるから、同原則及びその趣旨が及ぶものではなく、いかなる差別的取り扱いをすることも許されるというべきであると反論しました。

判決では、原告を経営から実質的に排除し財産的犠牲を強いるという目的において正当性を欠き、株主の監督是正権を行使できなくなるという点において手段の相当性も欠くものとし、株主平等原則の趣旨にも公序良俗にも違反するため、決議の内容自体が法令に違反するとして無効と判断されました。

非公開会社における属人的定めにも一定の限界があるということに注意してください。

【参考文献】
「株主総会の議決権および剰余金の配当に関する株主ごとの異なる規定を新設する内容の定款変更を行う旨の株主総会決議が株主平等原則の趣旨に反し無効とされた事例」旬刊商事法務NO.2140 64頁(2017)
山下友信『会社法コンメンタール(第3巻 株式(1))』76頁(2011)
江頭憲治郎『株式会社法(第7版)』133頁(2016)
江頭憲治郎『論点体系 会社法』299頁(2012)

         

                                執筆者 司法書士 吉田直矢



お知らせ一覧に戻る